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役職員紹介

***これは新卒で当社に入社した職員が経験した実話を基にして物語風にした記事です。***


§1. 高校生が働きに来る?!

2023年12月、iHeart Japan株式会社(iHeart)に一通のメールが届いた。東京に住む高校生がiHeartの京都事業所で職場体験をしたいと願っているという内容で、差出人はその高校生(Kさん)の親だった。よく練られた文章で、その行間からは、iPS細胞を活用した医療用製品の開発に関心を持つ我が子の願いを叶えたいという親の思いが溢れんばかりだった。このメールはその日のうちにiHeartの経営幹部たちの間で共有された。

Kさんが通う学校では、教育の一環で5日間の『職場体験学習』というものがあるらしい。教育としてはとても良い取り組みだろうが、その受け入れ先となる企業にとっては必ずしもメリットがあるとは言えない。特に、iPS細胞のような最先端の研究分野では、社外の人間が事業所に立ち入ることで、製品開発プロジェクトの遅延、機密情報の漏洩などのリスクが上がることも考えられ、デメリットがあるという考え方もある。

iHeartの経営幹部たちは、このメールを読んですぐに、多くの同業他社が受け入れを躊躇し、拒否するだろうと考えた。研究開発に関わる情報の取り扱いが特に厳しい業種だからだ。しかし、いや、だからこそ、iHeartは、敢えて、この職場体験学習を受け入れるべきかもしれない。iHeartでは、自社の使命を「前例が無いことに挑み、前例を作ることによって社会を進歩させ、より良い世界を作る」と定めているからだ。他社がやらないから、自社がやる。その結果として、社会が少しずつ良くなっていく。それを目指すことがiHeartの行動の基本にある。賛否両論の意見交換の末、iHeartは受け入れると決断した。

後日分かったことだが、実際に、Kさんは、iHeartにメールを送る前に、大手製薬企業などに何社も職場体験学習を願い出て、すべて断られていたらしい。

iHeartは、Kさんの職場体験学習を受け入れると決めたが、この受け入れプロジェクトを誰が担当するかが次の問題だ。それを決めるため、中間管理職らが集められた。社長からは「当社の経営理念に従ってこれは受け入れる。ただし、一方的なボランティア活動で終わらせず、必ず当社にもメリットがあるようにしなさい」と命じられている。中間管理職らが相談した結果、入社から3箇月ほどしか経っていない新人(Tさん)に白羽の矢が立った。その理由は、この受け入れプロジェクトをTさんの人材育成の一環と位置付け、まだ当社でプロジェクト・リーダーをしたことがないTさんの「職務遂行能力の成長」を「当社のメリット」とするというものであった。iHeartは「意欲と能力がある人に機会を与え、成果と貢献があった人に報いる」という信条を掲げている。Tさんが入社直後からどの仕事にも意欲的に取り組んでおり、能力を急成長させていることは誰もが知っていた。こうして、Kさんの職場体験学習とTさんの育成とのwin-winを狙うプロジェクトが始まった。

§2. 通らない企画。得られた気づき。

Tさんは困っていた。Kさんが、わずか5日間で、細胞培養について学び、細胞培養ができるようになる超効率的な教育訓練プログラムを自信満々で提案したところ、社長に却下され、ゼロから考え直すように命じられてしまったからだ。しかも、社長が言ったことがよく分からない。社長は「職場は学校ではない。高校生にもできる仕事を経験させなさい。」と言っただけで、後はTさんの上司(Fさん)が指導するように命じて、別の会議に行ってしまった。

Fさんによると、「職場は働くところだから、職場体験では『働くこと』を経験させるべきであり、学校の授業の真似事のようなことをするな」という意味だったらしい。確かに、細胞培養の理論や手順の説明なら、わざわざiHeartまで来なくても、学校どころか、YouTubeですら学べる時代だ。そんな説明を聞いても、働くことを経験したことにならない。

Tさんは思った、「高校生にもできる仕事かぁ。ん~、実験室の清掃の補佐とか?」。

Tさんは再び困っていた。高校生にもできる仕事ということで、実験室の清掃補佐を提案したところ、社長に全面的に却下され、厳しく叱られたからだ。

「自分が半年前から楽しみにしていた職場体験で掃除をさせられたという状況を想像してみなさい。ガッカリするでしょう。当社の信条の一つに『ガッカリさせた分だけ、自分の価値が下がる。集めた感謝の分だけ、自分の未来が拡がる。期待を上回ろうとする気持ちが仕事を楽しくする』というものがあるのは知っていますね。Kさんの期待を上回ってください」。それが社長の指示だった。 Tさんは、何度も何度もプログラムを見直した。その過程で、Kさんの期待だけでなく、上司の期待も上回ることを目指そうと考え始めた。そして、単にKさんにiHeartの業務を体験させるだけでなく、KさんがiHeartの仕事の魅力や意義を感じられるような体験を提供することが重要だと気づいた。

「高校生にできること」、「期待以上の経験であること」、「本当にiHeartの業務であり、iHeartにとってもメリットがあること」の全てを満たすことが求められている。そんなプログラムを作るのは簡単ではなかった。しかし、Tさんは、この難題を乗り越え、企画は承認された。

§3. 計画するときは用意周到に。実行するときは臨機応変に。

Tさんは、細胞培養加工施設にいなくてもできる細胞培養に関する座学部分を動画と書籍で事前に学んでおいてもらうことで、5日間しかない職場体験では、座学部分を最小化し、細胞培養加工施設にいなければ経験できない部分を最大化した。また、比較的重要度が低い物品ながら、iHeartが購入すべき物品をKさんが選定し、理由と根拠と共に提案するという、購買業務の一つをKさんに経験してもらうことにした。更に、治験に参加することを検討する患者さんが読む文書をKさんが読んで、専門知識が無い人にとって分かりにくい語句や表現を指摘し、iHeartの職員がそれらの語句や表現を修正するという仕事を考案し、高度な専門知識を持たない高校生だからこそvalueが出せる仕事をKさんに割り当てた。

しかし、Tさん一人ではこれを実行できない。実行の段階はもちろん、準備の段階から既に他の職員の協力が不可欠だ。Tさんは、iHeartの行動原則の一つに「目的を理解し、目標から逆算して行動計画を立て、仲間と協働する」が掲げられている理由が分かったように思えた。「いつ」「誰が」「何を」するかを考え、誰が見ても誤解する余地がない表現で明確に言語化し、仲間に伝えなければ、プロジェクトはまともに進まない。精度が高いコミュニケーションが必要だということをTさんは実感した。

iHeartには、「計画するときは用意周到に。実行するときは臨機応変に。」という言葉がある。実際、念入りに計画したつもりでも、実行し始めると、思うように行かないことが起こる。例えば、Kさんは、デスク・ワークをTさんの想定を大幅に上回る速度と精度で仕上げた。それに驚いたTさんは、Kさんはウェット・ラボの仕事も同じように手際よくできるだろうと思ったが、その仕事はKさんにとっては何もかも初めて尽くしであり、今度はTさんの想定より苦戦することになった。Tさんが実技の指導をしなければならない場面だったが、Tさんにとって当たり前でほとんど無意識にできていたことをKさんにうまく教えられないという事態が起きた。 Tさんは、このプロジェクトを通して、仕事のチームワークとは、単に仲良くしているということではなく、精度が高いコミュニケーションが取れるということであることを思い知った。

§4. プロジェクトの終わりに

5日間の職場体験学習の最終日、Kさんは別れの挨拶で、「新入社員と既存社員が1対1で昼食に行くことを推奨する『welcome lunch』という制度や、新入社員が読むことを推奨する『独学図書』という制度など、iHeartが新入社員に対して行っている様々な制度が適用され、まるで新入社員のように受け入れてもらえたことが嬉しかった」と話した。その言葉以上に、話しぶりから伝わって来るものがあり、Tさんは「このプロジェクトをやって、本当に良かった」と思った。居合わせた他のiHeartの役職員も同じように思ったことだろう。 Tさんは、このプロジェクトを振り返って、次のように語った。

「このプロジェクトは、私にとって、補助する側(アシスタント)から主導する側(プレイヤー)になる転換点となりました。」 「他の役職員が、『自分の担当業務ではない』という態度ではなく、気にかけてくれていて、こちらから仕事を頼む前に、『依頼されそうなこと』として把握してくれていたおかげで、スムーズに進められたのが嬉しかったし、プログラムのアイデアを自発的に持ってきてくれるなど様々な場面で助けてくれたのがありがたかったです。」

「自分が関わった人が、そのことをきっかけとして、医薬の道に進むようになると、嬉しいと思います。」

このプロジェクトの開始時に掲げられた「Kさんの職場体験学習とTさんの育成とのwin-win」という目標は達成された。


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